あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
喜べばいいのか、怯んだ方がいいのか分からない。

 もしも血の契約を交わしておらず、今純粋な気持ちで煉魁と結婚の誓いを交わせたらどんなに幸せかと思う。

 色々な感情が雑然となって、もはや自分の気持ちが迷子になっている。

「俺と結婚するのが嫌になったか?」

 琴禰の戸惑っている表情を見て、煉魁が訊ねる。

 琴禰はハッとして、首を振った。

「いいえ。私と結婚してください」

「そういうことは、男が言うものだと思ったが、人間界では違うのだな」

「こんなこと言うのは、私くらいだと思います……」

 途端に恥ずかしくなって俯く。

「そうか、俺の嫁は見た目によらず男前だな」

 煉魁は楽しそうに笑った。

 嫁と言われて、胸の奥がくすぐったくなる。

 誰にも愛されず、誰とも結婚できず生涯を終えるものだと思っていた。

 神様はつくづく琴禰に、最高で最悪の贈り物を寄こされる。

「さあ、琴禰の気が変わらないうちに結婚してしまおう」
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