あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
 煉魁が手の平を出すと、何もなかった手の平の上に、指輪が二つ出現した。

「これが指輪というものですか。綺麗ですね、初めて見ました」

 煉魁は、大きな方の指輪を琴禰の右手に持たせ、小さな方の指輪を琴禰の左手の薬指にゆっくりとはめていく。

「これからはずっと一緒だ。俺が琴禰を生涯守る」

 指輪がはめられると、体中に強力な結界を張られたような感覚になった。

 まるで愛に包み込まれたかのようだ。もう一人じゃないと指輪が言外に示してくれているようだった。

 ぽとりと涙が零れる。煉魁の強い愛を感じたからだ。

 嬉しいけれど、消えてしまいたいほど苦しい。

 この愛に、応えたかった。

「なぜ泣く?」

 煉魁が心配そうに小首を傾げた。

「嬉し涙です」

 泣き笑いの顔で、煉魁を見上げると、煉魁はほっとしたように微笑んだ。

「さあ、次は琴禰の番だ」

 煉魁が左手を差し出した。

 渡された指輪を指先で摘み、震える手で薬指にはめていく。

(もしも、これをはめたら、私の邪な気持ちに気が付いてしまわないかしら)
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