あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
結婚の誓いは、感情までも伝えることができるものだとは思ってもいなかった。

 自分はなんて罪深いことをしようとしているのだろうと怖くなる。

(ただ、煉魁様を好きな気持ちは偽りじゃない)

 心の底から結婚したいと願っている自分がいる。

 愛しく想う気持ちが伝わりますように。

裏切りの中に、本物の愛があったのだと、それだけは本当だったのだと、いつか伝わりますように。

 願いを込めて、指輪をはめた。すると、煉魁の体にも強力な結界のようなものが付いた。

「温かい。琴禰の真心が伝わる」

 煉魁はとても幸せそうな顔で微笑んだ。

 邪な気持ちは気付かれずに済んだようで、安堵した。

「これで俺達は、正真正銘の夫婦となった」

 琴禰も笑顔で煉魁を見上げる。

「愛している、琴禰」

 煉魁はゆっくりと琴禰の顔に寄せてきた。

 互いに瞼を閉じ、触れるだけの口付けを落とす。

 柔らかな唇の感触に、本当の夫婦となった証を感じた。

 満開の桜が柔らかな風に揺れ、二人を祝福するかのようにさわさわと鳴った。
< 84 / 227 >

この作品をシェア

pagetop