あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
どうやら、人目もはばからずくっついていたが、あれでも煉魁的には遠慮していたようだ。

「私の部屋はどこになるのですか?」

「全てだ」

(す、全て。共有ってことかしら。そうね、そうよね、夫婦ですもの)

 煉魁は琴禰を後ろから抱きしめながら、愛おしそうに琴禰の首筋の匂いを堪能しているので、くすぐったくて仕方がない。

「もちろん寝所も一緒だぞ」

「は、はい」

 さすがの琴禰も、そこは覚悟している。

 夫婦なのだから、寝所が一緒なのは当然だろう。

頭では理解していても、急激に心臓の音が速まる。

「そうだ、一緒に湯殿に入ろうか」

「え⁉ 一緒に入るのですか⁉」

「夫婦なのだから、当然だろう」

 そうなのだろうか。夫婦というのは、そういうものなのだろうか。

 祓魔の中でも隔離されて育ってきたので、そもそも世間の常識というものをあまり知らない。

「わかりました。お背中お流しいたします」

 琴禰は決意に満ちた顔で力強く言った。

「それじゃ侍女と変わらないだろう」

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