あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
(え、違うの?)

 では、一緒に入って何をするのだろう。

 よく分かっていない様子の琴禰に、煉魁は言った。

「よし、じゃあ今から教えてやろう。夫婦というものは何かということを」

「今から入るのですか?」

「そうだ。琴禰は何も分からないようだから、俺が手取り足取り教えてやる」

 自信満々に言われると、そういうものなのかと思ってくる。

「すみません、不勉強なもので。お願いいたします」

「いや、誰にでも初めてというものがある。これから学んでいけばいいのだ」

「ありがとうございます」

 煉魁も初めてだというのに、さも経験者風に言うと、素直で純真な琴禰は疑うことなく、殊勝な様子で頭を下げた。

 湯殿の準備を終えると、二人は白い浴衣に着替えて大きな樽桶の中に入った。

 煉魁は裸で入りたかったが、琴禰が恥ずかしがったので譲歩した形だ。

 琴禰を後ろから抱きしめる体勢で、適温の湯に浸かる。
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