あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
ポツリと呟いた琴禰の言葉に、煉魁の胸がきゅっと締まる。

 愛しい気持ちが暴発し、琴禰の体をくるりと反転させ向き合った。

「恥ずかしいです、煉魁様!」

 抗議の声を上げる琴禰に、煉魁は強く抱きしめる。

「ほら、こうしていれば見えないだろ」

 互いの姿は見えないけれど、体が密着しているので余計に恥ずかしい。

 でも、なぜか安心する。

 一人じゃないということが、こんなにも心が満たされることだったなんて。

 琴禰も、そっと煉魁の背中に手をまわす。

 煉魁の肩に顎を乗せて、目を瞑る。

(温かい……)

 初めて、安らかで穏やかな気持ちに包まれた気がする。いつも気を張っていた。怒られないように、これ以上嫌われないように。

 ここにいていいと思える安心感。包み込んでくれる絶対的な愛情。

 ずっと求めていたものに出会えた気がした。
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