あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
湯殿から上がった琴禰は、濡れた浴衣を脱ぎ、体を拭いていた。

 すると、屏風の向こう側で着替えていた煉魁が待ちきれずに声を掛けた。

「まだか」

「すみません、今すぐ……ひゃあ!」

 琴禰が新しい寝間着用の浴衣に袖を通したばかりだというのに、煉魁は屏風の仕切りを取り払った。

 まだ帯も締めていない。さすがにせっかちすぎだろうと思う。

「着なくていい。すぐに脱がすのだから」

「なっ!」

 襟の合わせを体に巻き付けるようにして、なんとか体を隠した琴禰を横抱きにする。

「れ、煉魁様⁉」

 戸惑う琴禰をよそに、煉魁は琴禰を横抱きにしたまま歩き出す。

 そして寝所に着くと、天蓋付きの大きな寝台に琴禰をゆっくりと寝かせた。

 煉魁は琴禰に覆いかぶさり、熱情を含んだ瞳で琴禰を見下ろした。

「震えている、怖いのか?」

 指摘されて、初めて震えていることに気が付いた。

「怖くないと言ったら、嘘になります」

「ふっ、正直だな」
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