あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
「いいえ、煉魁様が働いているというのに、私だけ楽をするわけには!」

「俺と琴禰では体力が違う。それに、今晩も無理させるだろうから、ゆっくり休んでおいた方がいいぞ」

 琴禰は途端に顔が赤くなった。

「はは、琴禰はすぐに顔が赤くなる。うぶな反応が可愛いな」

 煉魁は琴禰の額に口付けを落とした。

「それでは行ってくる」

と言った煉魁の顔付きは、すでに王の威厳に溢れていた。

 部屋から出て行く背中を見送りながら、無意識に見惚れていた。

 どんな表情をしていても麗しい。こんな素敵な方が我が夫なんて信じられない。

(ゆっくり休んでおけと言われたけれど、動かなくちゃ)

 本当はまだ体が重かったけれど、できることは率先してやりたい。

(さあ、まずは掃除ね。この広さ、やり甲斐があるわね)

 琴禰は気合を入れて立ち上がった。

 掃除をしている琴禰を見ると、侍女たちはぎょっとしていた。それでも構わずに掃除を続ける。
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