あやかし王は溺愛する花嫁に離縁を言い渡される
高貴な者は、掃除など身分の低い者がやる仕事だと見下している。好んでやる者などいないし、やること自体彼らの矜持が許さないようだ。

 人間とはいえ、あやかし王の伴侶になったということは絶大な権力を有したということだ。それでも下働きがすることを自ら率先してやっている。

 侍女たちの琴禰を見る目が徐々に変わってきていた。

 一方、勝手に結婚した、あやかし王は、幹部たちから小言を言われるもどこ吹く風といった様子で聞き流していた。

 もういくら文句を言ったとしても、もはやどうにもならないので、皆が受け入れ始めていた。

 目下の問題は、あやかしの国民と大王にいつどのような形で伝えるかということ。

 王の結婚は、盛大な催しを連日連夜続けるのが一般的だが、あやかし王は二人だけで結婚をしてしまった。

 幸福感で満たされ、ご機嫌な様子のあやかし王のことは放っておいて、臣下たちはやるべきことがいっぱいだ。

 煉魁が仕事から帰ってくると、寝台でまだ寝ているかと思っていた琴禰が掃除に精を出していた。
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