好きなのは、嘘じゃない。


「どうしてあんな奴らのことは好きになるんだよ」


咲夜が私を真っ直ぐに見つめる。

言葉が出てこない、…少し優しくされたから?
そう口にしようとするけれど、口が開かない。






「…俺のことは好きにならないくせに」


ばか、と咲夜は続ける。

…え?


怒っていると思っていた、咲夜の顔は


──「…俺が好きだって言ったらどうする」


あの時と、
同じ頬を赤く染めて私を見つめている。




「…え?」


拍子抜けした私は、咲夜を見つめ返した。



「春ってほんとバカ」


バシッと優しく私の頭を叩く咲夜。
…いや、おかしいよ。









「好きなのは、嘘じゃない」






混乱する私を置いて、咲夜は意地悪そうに微笑む





今日は4月1日、エイプリルフール。


咲夜の嘘が、私を掻き乱した日。
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