好きなのは、嘘じゃない。

恋は甘いもの



__「好きなのは、嘘じゃない」

忘れられるわけない、
なかったことなんてできやしない。

もう何百回も
頭の中で同じことが再生されている。

あれから、どんな会話をしたのかすら
忘れてしまうくらいに…


気づけば、私は自分の部屋の
ベッドに突っ伏していた。

「…意味わかんないし!」

咲夜のあんな顔、

今まで見たことがなかった。


──まさか、本当に私のことを?

いやいや。あの咲夜だよ?


時刻は20時を過ぎている。

私はポケットの中にあるスマホを開く。

…咲夜からはなにもない。

あるわけが、ないんだ。

咲夜とのやり取りをスクロールし続ける。


“明日の宿題、咲夜もうやった?“

“やったよ“

"お願いします、見せてください"

"は?やだよ"


ほんと、私達ってまともな会話してない。



"あいつはやめておけって何度も言ってる"

"もうフラれたしもういいの!"



"ダイエットも、もうやめろよ"


この時、私が先輩のために
ダイエットしていることを咲夜は知らないって
ずっと思ってたんだっけ。


でも、咲夜には見透かされていて


"私がダイエットしてるの、知ってたの?"

"365日やってんだろ"

"やってないわ!"


気づいたら仲良くなって
いつも隣にいたから気づかなかった。


こんな過去のやり取りなんて
なんで今になって見返してるんだろうって

なんで、
こんな言葉では表せない気持ちになってるのか

なんて。


私は、スマホ画面を閉じた。

じゃないと、咲夜のことばかり考えしまうから。


──でも、

それを咲夜は許してくれなかったみたいに


スマホ画面が明るくなり

うるさいほどに鳴る着信音が部屋に響く。



"咲夜"


あいつの名前を見るだけで
こんなにも胸が高鳴るなんて。
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