好きなのは、嘘じゃない。
「またフラれたあああああ」
朝、1番に聞こえてくるのは
いつも春の声だった。
またフラれたのかよ。
いいじゃないか、そんな奴なんてもう。
あの先輩いい噂聞かないし
そもそも彼女いるって
何度も言ってただろ?
「またフラれたのかお前は」
少し
優しくされただけで好きになって
ほんと春はちょろいなって思う。
「だって、私。ちょろいんだもん」
そうだよ、
それならなんで
こっちを見ないんだよ。
「…俺が好きだって言ったらどうする」
いつだって、
見ているのは俺だけだった。
だけど今、
春の瞳には俺が映っている。
やっとこっちを向いてくれた。
好きなのは、嘘じゃない。
「…私は咲夜のこと嫌い」
だから
嘘だよ、って笑って言う春を、
その日を待っている。