とある賢者の執着愛ーー貴女を他の誰かに取られるくらいなら

とある賢者の執着愛ーー貴女を他の誰かに取られるくらいなら



 真っ赤な満月が昇る夜、オリヴィアは城近くの泉にやってきた。今宵の儀式の為に人払いをしてあり、王子と護衛の数人しかこの場には居ない。

「儀式の手順は覚えているか?」

「はい、頭に入っております。ここから先は私一人で執り行い、王子は泉から離れた所でお待ち下さいませ」

 今日まで軟禁状態であったオリヴィアはますます痩せ、肌も透き通るように白い。下着を身に着けず布に包まれた身体をみ、王子がごくりと喉を鳴らす。

「? 王子?」

 場を下がらない彼にオリヴィアが首を傾げた。王子も学者から儀式について説明を受けているはず、それなのに護衛が持つ松明でオリヴィアを照らす。

「オリヴィア、寒くないか?」

「……これから泉に入るのですよ?」

 寒くないはずがないと答えつつ、別の悪寒を察知した。王子は先に護衛を控えさせるとオリヴィアに近付く。

「ダイヤモンドを見せて貰ってもいいか、肌身はなさず持っていると聞いたが? ブラッドリーの秘宝をこの目で確かめておきたい」

「このダイヤモンドは不出です。むやみやたらに他人へ晒したり出来ないと申し上げたはずですが?」

 オリヴィアは胸に手を当てたが、ダイヤモンドはない。一応偽物を用意して付けてはいるものの、王子の目的がそれではないと理解している。
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