とある賢者の執着愛ーー貴女を他の誰かに取られるくらいなら
「ねぇ、ジョシュアと呼んでも?」

「えぇ、貴女が呼んでくれるのならどんな名でも構いません」

「なら、メルキオール様とブラッドリーの契約はもういいの?」

 オリヴィアの疑問にジョシュアは左目を披露する。永きに渡りブラッドリー家に授けてきた瞳を取り戻した彼はオリヴィアを鮮明に映す。
 王子達の前では賢者とブラッドリーの娘を演じたが、それは表向き。こうして見つめ合う二人はただの男女である。

「オリヴィア様、私は気が遠くなる程の歳月をブラッドリー家に加護を与えてきました。それは貴女と巡り合い、開放されるまでの旅だった。実は私にも呪いがかけられていたのですよ」

「呪い?」

「えぇ、私が愛せる人を見つけたなら解ける呪いです。やっと印が表れ、愛せるのがお嬢様であると分かっていながら私は手放そうとしました。
 そもそも印などなくともお嬢様は私にとって大事な人だ。この身は何百年と生き長らえた化け物で、お嬢様には人と幸せになって欲しいと考えました」

 オリヴィアはジョシュアを抱き寄せた。

「そう、貴方は呪いを解きたくてブラッドリーにダイヤモンドを授けたのね。そして呪いを解く事よりも私を優先してくれた。こんな美しい心根のジョシュアを化け物扱いするなら、私が退治してあげるわ! 任せて頂戴!」

 ジョシュアもオリヴィアを抱き返す。

「それは勇ましいですね。素手で熊を倒しそうだ」

 額と額をぶつけ、吹き出す。
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