とある賢者の執着愛ーー貴女を他の誰かに取られるくらいなら
 この時代、良家の娘が嫁に行かないのは勤めを放棄したと見做された。オリヴィアでもその偏見から逃れるのは難しい。
 彼女一人が後ろ指さされるだけならともかく、それこそブラッドリー家の先祖に顔向けが出来なくなる。

「と、ともかくだ。賢者様のお許しを得て、お前を嫁に出さねば我が一族は潰えてしまう。それだけは避けねばならない!」

「そもそもですが、ダイヤモンドの呪いなど迷信では? 賢者様のお許しなどと言っても当人は亡くなっているし、仮に他の相手に嫁いだとして災いが本当に起こるかは分からないでしょう?」

「あぁ、オリヴィア、お前はどうしてそんなに不謹慎なのだ……」

 頭を抱える父親にオリヴィアが首を横に振る。
 両親といい、隣国の王子といい信仰深いのは良い事と思いつつ、一番信じられるのは未来を切り拓く自分の力であるとオリヴィアは主張したい。

「左目が赤く染まったのもお告げじゃなく、単に疲れが出たのよ。だからーー」

「もういい! 毒は毒をもって毒を制す。近いうちに屋敷へ魔女を招こう。いいか、ジョシュアはオリヴィアを部屋から一歩も出すんじゃないぞ?」

 テーブルを揺るがし、カップを倒す父親にオリヴィアは言葉を失う。一方、母親は人形のように黙りこくり事態に干渉しなかった。
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