素直に気持ちを言えたなら

「おはよう」


「お、おはよう…」


 玄関を出て、彼と朝から顔を合わせてしまった。少し気まずい。


「部活?」


「あ、うん」


「俺も今日は他校と練習試合」


「そうなんだ」


「今日も練習見に来るんじゃねーの?先輩スタメンだぞ」


「あ、いや、今日は私も部活抜けられないから」


 それに、別に先輩の姿を見たいわけではないし。


「そっか」


 桜並木を歩きながら、はらはらと落ちてくる桜の花びらに意識を向ける。


 いつもなら色んな話題を振ってくれる彼が、今日は珍しく言葉数が少なかった。


 今日の部活の試合は、大事な試合なのかな。緊張してるのかな…?


 それとも、昨日の私の告白を、少しは気に掛けてくれていたり…。


 そんなわけ、ないか…。エイプリルフールの嘘だって思われちゃったみたいだし。仕方ないよね、私のタイミングが悪かったのだから。


 春休み中の学校に到着して、私達はそれぞれの部活に向かうため昇降口で別れた。


 私は美術部に所属している。


 春休み中に新入生歓迎のポスターを作製しなくてはならない。


 昇降口入ってすぐの掲示板に貼る、「入学おめでとう」のポスターだ。


 今年はそれを私が任されていた。


 おおまかになんとなく春のお花を描こうかな、とは決めていたけれど、まだこれといってピンとくるものがなく、結局私は画用紙を見つめ続けていた。


 少し外に出てみよう。何かイメージが掴めるかもしれない。


 私は画版を持って、校舎を飛び出した。


< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop