前世へのレジスタンス
窓から少し、風が教室へと入ってきた。
一瞬その風が私にあたるのを感じ、思わず顔を上げてしまった時、私の長い黒髪は風になびかれ少し顔にかかった。

その髪の毛を目の前の人は優しく私にかからないように撫で、その手は私の頬へと触れた。


(何…)


その手を退けることと出来たのに、それよりも


(その目は…)


何かを悲しそうに見つめる瞳だった。

「君は変わらないね。何も。」

寂しそうにつぶやくと、その手はゆっくりと頬を伝い、そして少しニコッとした表情を見せるとともに体を正面へと向き直した。

あの悲しそうな瞳。
時折見せるあの表情が、キラキラしているスターの1面だなんて意外だ。

変わらない?
それはまた違うどこかの世界の?


もし他の世界に私がいるしたら、
今より幸せな、普通の家族の中で暮らしているのだろうか。
でもどうかそうであってほしい。
その分の不幸を、この今、この世界の私が全部背負っていると思って…


彼の背中が少し震えたように見えた。



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