前世へのレジスタンス
細く、白く、
透き通るような儚いような手だった。
触れ方が優しすぎて、よく分からない…この感情は。
「黒髪、染めたこととかないの?」
「無いよ。…でもこの髪は嫌い。」
「…そっか。」
あ、聞いてこないんだ。
聞かれても、別に答えたところで何かが変わる訳でもないし。
「僕は憧れる。綺麗な黒髪…」
「え…」
私の髪に触れていた手が離れた。
その時に小さな声が聞こえたのを、私はしっかり聞き逃さなかった。
私は…
「逆に良いと思う。その明るいの」
今の生活に余裕があったら、遠の昔にこんな黒髪とおさらばしている。
「地毛なんだ。これ」
「え、すごい。綺麗…」
私はすっと手を伸ばし、その明るい茶色でもなく、金髪すぎる訳では無い、不思議な色に魅了されるように触れてしまった。
「あっ…」
私は触れてから咄嗟にその手を戻そうとする。
思えばこの人はアイドルだ。
無意識でも触れてしまって良い存在では無い。
「ごめん。」
「…ははっ」
「え!」
急に金井くんは笑いだした。
私は金井くんを不思議な人だと思いながら見ていると、さっきまで全力疾走していた2人がこちらに戻ってきた。