前世へのレジスタンス
『そんなに見ないで』

間奏の間に私の耳元にささやくように金井くんが言った。

耳がなんだかふわふわする。
私は少し右上を見る。

(本気で歌いすぎた…ってこと…なのかな)

金井くんの顔や耳が、少しだけ赤くなっているような気がしたのは、気のせいなんだろうか。

こんな表情もするんだ…


歌い終わると自然と座り直し、一息つく。
プロの歌唱に2人も聴き入ったのか、うっとりした表情だ。

「なんであの曲、分かったの…」

セイが今流行りのバンドの曲を熱唱しているなか、私は金井くんに聴いた。

あ、またこの顔…


「君は日本の曲が好きだったから」


真っ直ぐ私を見て、少し口角を上げてニコッとした表情を見せた。
その瞳の奥はやはり悲しそうで。


「おい、2人とも俺の歌聴けよー」
「あー、ごめんごめん。」

瞳に吸い込まれそうなところで、セイの一言により現実に引き戻された。

危なかった……





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