前世へのレジスタンス
カラオケをでても、私の心拍数は上がったままだった。
自分でも何かおかしいことに気がついていた。

「…い、…、おい!!」
「…っあ!…ごめん。」

ぼーっとしていたのか、何回かセイが声をかけてくれていたのに気づかなかった。


「今日、ちょっとおかしくないか?」
「あー、そうかな?」

駅前のアーケード街で金井くんとエリナちゃんと別れ、セイと二人で家路に着く。
今日はなんだかおかしい。

「…」


金井くん。
なんで金井くんのことを思い出しているんだろう。

「あのさ、セイ」
「ん?何?」


「私が恋したらおかしい?」
「ぷっwwwwww」

セイは思いっきり吹き出して、笑った。

「は?何かの勘違いだろ」
「勘違い…じゃない……」

私の真面目な声のトーンに、セイは笑っていたのを急停止した。


「誰…だよ……」


私は制服の胸元のネクタイをぎゅっと握った。

「え、あ、…えっと……」

こんなの自分じゃないくらい、言葉が詰まる。
心拍数が上がる。
少しずつ体温が、顔や姿を思い出す度に上がるのが分かる。

気付かないふりをしてただけ。
こんなの自分じゃないって。
今の生活を崩さないために、分からないふりしていただけ。


私にも、こういう感情がしっかりあったんだ。


「カナ…」


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