前世へのレジスタンス
「顔を上げて」

優しい声が聴こえて、私はゆっくり顔を上げる。
いつものように優しくまた微笑んでる。

私の目から流れる涙を、金井くんはそっと自分の手で拭った。


「やっと素直になってくれた」


こんな感情にさせたのは、あなたでしょう。


少し意地悪そうな顔をして笑っていた。

私はさっきよりも少し強く抱きしめられていた。
金井くんの鼓動が少し早くて、それに釣られるみたいに私の鼓動も早くなる。


「彼女になって下さい。」
「…い、いの、」
「もちろん。」


自分でも本当に訳が分からないくらい泣いた。
今まで生きてきて、抑えてきた全感情が、溢れ出して行くみたいに。


「あ、誰か来たかも…」
「えっ」
「…こっち」

他の生徒の声がする方とは逆の方に、金井くんは私の手をそっと繋いで走り出した。


「…実はこっちからも屋上行けるんだよね」
「それ、普通にまずいんじゃ…わあっ」

少し走り、こんなところにハシゴなんてあったんだと気付かされた。
普段誰かが登っているのなんて見たことがないし。


学校の屋上なんて、学生生活で1度も来たことがなかった。


「あの、アイドルがこんなところに女子と2人きりでいるのは、どうかと思うんですけど。」
「あんなに泣いてたのに、言える?」
「っ…」

確かに、泣いてしまった私が悪いけど…
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