前世へのレジスタンス
「え?あ!はい!」

私は咄嗟にバッグの中の何かしらのノートとシャーペンを取り出し必死にメモをした。

「え、ありがと、なんで?」

セイの声は至って冷静で、いつも通りだった。
さっき照れながらエリナちゃんと話してたとは思えないくらいに。


「俺が気づかないと思った?」
「ん?」

「カナもおめでと、あとごめん。」


セイにはバレてたか…
幼馴染だし、お互いの事を知りすぎているからこそいつも通りじゃないとすぐバレてしまう。

「セイ、なんで昨日あんなこ…」
「ごめん。忘れて。」

電話越しだけど、何か言いたくないことが自分の中であるということは分かる。
キスの意味。

いつか教えてよ。


「うん。忘れる。」
「金井そろそろ仕事とか終わんじゃね?勘だけど」
「うん。ありがとう。」


今はその意味を知らなくても平穏な日々が遅れるのならそれで良かった。

私はセイに教えてもらった番号に電話をかける。

発信のボタンを押す手が少し震えているのが自分でもわかる。

何コールか分からないくらい待って、その音がガヤガヤとした音に変わる。


「はい、もしもし。」
「あ、く、黒崎カナです。」
「ぷはっ…くくっ……」
< 50 / 107 >

この作品をシェア

pagetop