前世へのレジスタンス
初めて浜辺で会った時に歌っていた歌だ。
たまに金井くんのこの曲の鼻歌を聴いたことがある。

「まだ教えてくれないの?」
「うん。教えない」

いつも何の曲かを教えてくれない。
私も真似て歌ってネット検索かけてみたけど、なにもヒットしなかった。
まさか自作なのかな?
たしかにやれるスキルは無くはなさそうだけど。


「あ、授業始まる。」
「行かなきゃだね。」
「待って。」


教室に戻ろうと私は出口の方へと向かう。
急に呼び止められ振り返ると、私と金井くんの唇が重なる。
付き合ってからというもの、急にこういうことをされるからいつも驚かされる。

なんか、今日長い。
私は時間も時間だから金井くんを引き離そうとするけど、私の力では到底及ばず、金井くんが私の背中に回した腕の力がより強くなったのが分かった。


唇が離れると、金井くんは意地悪そうな笑顔を見せた。

「これで2ヶ月頑張れる」
「へぇー、単純なんだね。」
「え?んじゃもう1回…」
「待って授ぎょ…っ……」


たまに会えない日はあったけど、2ヶ月も離れるとなると寂しくなるものなのか。
まだそんなことに実感がわかない。

私は私のできることを、また会う日までしっかりやって、
小さな世界でもしっかり進んでいかなきゃ。
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