前世へのレジスタンス
「黒崎さんは就職ね…」
「はい。」

現実はどんなに待とうと、待ってはくれない。
高校三年生。
自分の将来へと向き合う時間がやってきた。

私に進学という考えは無かった。
早く今みたいな生活を抜け出して、早く自立した大人になりたい。

「就職は幅広いから、どのジャンルの職に着きたいか、今は決まっていますか?」
「いえ、…すみません、全く」

色々考えている割には、何か一つに絞るということを出来ていない。
普通に働けて、安定して生活できるお金が稼げれば何だっていいくらいの考えしか持っていない。

自分の考えの浅はかさを痛感する。


帰り際いつもの2人と一緒に帰っていたので、聞いてしまった。

「進路?あー、私もこの前面談したよ」
「俺も面談した」
「私は大学に行くよ。実家の会社を継ぎたいから経営学を学びたくて」
「俺も大学かな…まぁ大学まではなんとか資金ありそうだし」

2人の描く未来は大学生活だった。
エリナちゃんはともかく、セイは普通だったら大学に行く余裕など無いはずだけど、
チラッと前に施設の人が話していたのを聞いてしまったことがあって、セイの母親は実はかなり有名な企業の社長で、離婚して父親について行ったセイに養育費を払ってくれているらしい、と。
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