前世へのレジスタンス


「…お久しぶり」
「遠かったでしょ。…こっち」


ずっと差し出された手を握り返し、私は金井くんの後ろをついて行く。
歩きなれているんだろう。
こんな人混みのなかでも、誰にもぶつかることなくするすると避けながら歩いていく。

「そういえば、私服始めて見た」
「あっ…」

普段バイトに行くのもダル着だから、今日は自分の中でも気合いが入っている方だと思う。
スカートは苦手だから、薄めの白いサマーニットに、下は少し淡いブルーのスキニーパンツ、唯一持っていたヒールが付いたサンダルを履いた。
足先には少しマニキュアを塗ってみたりした。

私が少し見た目を良くしようとしても、大都会の人たちが通る人全員オシャレすぎて田舎者バレバレ感が否めない。


「変?」

あまりにもまじまじとサングラス越しに視線を向けられるから私はおかしくないかと心配になった。


「ううん。可愛すぎて…サングラス越しだけど目、合うとこっちが持たない。」

私は見えていないけど金井くんは普通に私の姿が見えている。
それよりも”可愛い”と言われて、私はもう耐えられそうにない。
一日中これが続くとなると、今日は生きて帰れるだろうか…
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