前世へのレジスタンス
「驚かせてごめん。」
金井くんは急に謝ってきた。
「え?何が?」
「無理に、記憶というか、昔のことなんて聞きたくなかったかなって。」
私は黙ってしまった。
たまに、一瞬景色が変わって見えたり、幻聴が聞こえたり、
「やっぱり原因は、その、…前世?それが理由?」
「そうだと思う。」
暗い雰囲気がこの一室に流れる。
せっかく会えたというのに。
「…僕は君を救うのに、何度もあの時代を繰り返していたんだ。」
「…」
「何度も何度も、僕は君を助けられていない。」
「…」
苦しかっただろう。
私には分からなかっただろう苦しみだ。
でも今なら分からなくもない気がする。
「何度目なのか分からない。だけどこの世界は前いた世界とは何もかもが違って、」
「何周目でたどり着いたのがこの世界ってこと?」
「うん。何故かは分からないけどね。」
金井くんの話をきいていると、個室の扉が開き、店長が出来たての料理を持ってきた。
私は金井くんの目の前に置かれたものに目を丸くした。
「え。」
「どうやら日本食が好きみたいなんだよね。」
『国民の王子』(まぁ、昔は本当のどっかの王子みたいだが)がまさかの飲食店(全員身内)で納豆ご飯を注文するとは…。