前世へのレジスタンス
本当は頬が緩んでしまいそうだったが、場所が場所なので気が引き締まる。

海シーズンはまだ続いているみたいで、学校近くのいつもの海は観光客で賑わっていた。
放課後金井くんと2人になったのは、以外に初めてだった。
人が多いので流石の金井くんもマスクを付けて身バレ防止をしていた。

これがいわゆる、”放課後デート”というものなんだろう。
岩の階段のところに座ってゆったりと海を眺める。
こういうゆったり出来る時間が本当に愛おしい。


「ん?そんなに見ないでよ」
「えっ」


やっぱりマスク越しでも横顔に見とれてしまった。
こんなきれいな顔の人が昔はどこかの国の王子様だった、なんて話は信用出来なくもない。


「先生とは進路、話せた?」
「うん。…私は塾も行けないけど出来る限りのことを頑張って見たいって…」
「うん。」
「無返還の奨学金が借りれるところ、頑張って目指してみようかなって…」

未来を考えると、少しワクワクする。
それと同時に死への恐怖も感じる。

この前夢を見た。
誰かが死体の前で笑っている夢。

夢にしては光景がリアルすぎて頭から離れない。
でもそんなこと考えていては前に進めない。
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