前世へのレジスタンス
「…黒崎、カナさん」
「…なんで名前知ってるんですか。」

左手が掴まれ、身動きが取れない。
その美しい顔に自然と私の視線が吸い寄せられていく。

「いきなりこんなこと言って、気持ち悪いと思うけど、」

私はゴクリと息を飲む。

人のご機嫌を伺って生きてきたからこそ身についた術がある。
彼は、寂しそうな目をしている。
瞳の奥が私に何かを訴えかけるかのように。



「僕は君を救うためにここへ来たんだ。」



「…っく、ぷっ…」
「あ、笑った」

そんなドラマか映画みたいなセリフ、よく言えるものだなと、私は込み上げてくる笑いを堪えようとしたが堪えられなかった。

「なんのつもりですか?」
「そのままの意味だよ」

これまた真面目に答えるものだから、もう笑いが止まらない。
セイや施設のみんなと居る時以外で笑ったことなんて久々だった。


「まぁ意味わからないよね…」
「はい、全くです」


目の前の美しい顔は少ししょんぼりとした顔をする。
その顔をまた綺麗で、不思議な感じだった。

「…あ、あの」
「何?」

「さっきの歌は、なんという歌ですか?」
「あれ、か…」
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