前世へのレジスタンス
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私は騙された。
薄々気づいてはいたの。


青沢くんの視線の片隅にすら、私は映っていないって。



「ねぇ、青沢くん」
「……」
「青沢くーん」
「…………」

「おーい、青沢くん」
「あ、何?」


夏休みに入った。
私たちは大学受験のために同じ塾に通い始めた。
毎日一緒にいられることが、とても嬉しかった。

夏休みに入る前に青沢くんに告白された。
実はずっと1年生の時から好きだったんだけど、 こう仲良くなれたのは、やっぱり青沢くんの幼なじみの黒崎カナちゃんのおかげだと思う。

付き合ってすぐの頃ってさ、いちばん楽しい時期だと思うじゃない?
舞い上がってるのが私だけみたい。
緊張してる、とか濁してる時もあったけど私は騙されたりなんかしない。


「青沢くんってさ、本当に好き?」
「何が?」

「私のこと。」


夏休みのある日、私の家に青沢くんが来た。
青沢くんの生い立ちを考えて、私は家に呼ぶのをかなり悩んだ。
だけどせっかくだからと、青沢くんの方から行ってみたいと言ってくれた。


だから、本当はこんなところ来たくなかったのかなとか
一緒にいたくないのかなとか

不安だけが積もっていってしまう。
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