前世へのレジスタンス
今日の授業はバレーボールだった。
神崎さんのボールは私が動かずと私の元へ飛んできて、私のボールは色んな方向にいってしまって、その度に神崎さんは走り回ってボールを追いかけてくれていた。

「ごめん、運動苦手で」
「全然大丈夫だよ、バレー楽しい」
「神崎さん、経験者?」
「違うよ。ずっと美術部だよ。」

これが文武両道。
神は二物を与えず、というけれど神崎さんには与えすぎなような気がする。

「私、黒崎さんと話してみたかったんだよね。」
「なんで?」
「私、黒崎さんって高嶺の花みたいな感じなのかなって思ってて。」

メガネ越しで目がにっこりと笑っている。
まさかそんなふうに思われていたなんて。

「話してみると、黒崎さんってとても話しやすいし、見た目はクールな感じだけど、そこのギャップを知らないからみんな話しかけるのを躊躇っているのかなって思っていて。」
「そんなこと、ないけど…」

自分から周りに壁を作っていたはずなのに、そう思ってくれていたのか。

「黒崎さん、次試合だからあっち行こう」
「うん。」

少し陰りが見えていた学校生活が神崎さんのおかげで、なんとなく過ごしていけそうだと思った。
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