孤独な心
全ての教科の授業を受け終わり、気づいたら放課後になっていた。


まだ帰る気配がなくずっとお喋りをしている女子達。


これでまた千紘先生のことを呼んだりしたら面倒なことになる…


どうしようかと項垂れていると


「何そんな難しい顔してるの?」


「咲月先生?」


「ちょっと、保健室においで。」


「えっ?」


「いいから。」


咲月先生は、私の手を取り保健室へ連れられていた。


「そういえば、こうやって2人でちゃんと話すのは初めてよね。」


そう言いながら、咲月先生は私に温かい紅茶を出してくれた。


「ありがとうございます。」



「汐帆ちゃん。朝は大変だったでしょう。」


「えっ?」


「たまたま教室の前通って。急いでたから汐帆ちゃんのこと助けにいけなかったんだけど…」


「あぁ…。大丈夫です。」


「みんなが帰るまで少しここでゆっくり休んで。

ここ自由に使って大丈夫だから。

それに、身体が辛い時も。無理しないで。」


「…どうして私にそこまで。」


「汐帆ちゃんが入学した時からずっと気になっていたの。

あなたの瞳。どこか寂しそうで、孤独を抱えて今まで必死に生きてきたんだろうなって…

あなたが体験してきたことは自分自身でしか分かってあげることはできない。

だからこそ、これからは少しずつでいい。周りを頼ってほしいの。

私もいるし、千紘もいる。千紘は絶対、汐帆ちゃんのこと見捨てたりしないし見放したりしない。

そんな無責任にあなたを引き取ったりしない。だから、難しいとは思うけど信じてほしいの。

千紘のことも。私も。」



私の手を握り、咲月先生は私の視線を捉えそう話した。


きっと、私自身も分かっているのかもしれない…


そうじゃなければ、全くの他人である千紘先生と一緒に住むことはしなかったと思うから。


だけど…


まだ、そこまで完全に心を許せる訳でもなくて…


自分の中で葛藤していることも事実。


「汐帆ちゃん。顔を上げて。」


「えっ?」


「そんなに、難しく考えなくていいと思う。

結局、信じてって言葉にしてもそこに行動が見合ってなければ信じることなんてできないわけだから…

だからこれから私達と一緒に過ごす中で見極めていけばいいと思う。」


そっか…


今、無理に考えたとしても結論が出るわけがない。


まだ千紘先生達に出会って間もないんだから…
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