孤独な心
「香音…。」
「だから、汐帆が千紘先生と一緒に暮らし始めたって聞いて安心したんです。
やっと、汐帆の抱えてた重荷が少し降りたのかなって。
だから、千紘先生。汐帆のこと途中で見捨てたりしたら許さないですから。」
「そんなことは絶対にしない。
汐帆のことを引き取ったのは、そんな中途半端な気持ちなんかじゃない。
汐帆の生活面も含めて、病気の治療のこと、完全にとまではいかないけど心も治療していきたいんだ。
1人の男として彼女を守るって決めたから。」
最初は、汐帆の病気が心配だったけど汐帆のことを知って彼女の存在が俺の中で大きくなっていた。
俺にとっても、もう欠かせない存在で汐帆のいない暮らしなんて想像したくない。
絶対に手放したりなんかしない。
「それなら安心です。」
陽稀君は、汐帆の寝顔を見ながらそう言葉にした。
「それじゃあ、私たちはこれで失礼します。」
「あぁ。汐帆のためにありがとう。」
2人は頭を下げてから保健室を後にした。
「咲月も、汐帆のこと見てくれてありがとう。」
「いいよ。汐帆ちゃんにも伝えたけど学校では汐帆ちゃんが無理しないように私がちゃんと見てるから。
まあ、無理しようとしてたら私が保健室に連れていくけどさ。
だけど、さっきの話聞いて千紘が汐帆ちゃんの事を中途半端な気持ちで引き取ったわけじゃなくてよかった。」
「当たり前だろ。また、汐帆のことで咲月を頼るかもしれないからその時はよろしくな。」
「うん。任せて。」
汐帆を後部座席に寝かせてから家へ向かった。
家に着いてからも一向に起きる気配がなく汐帆の部屋に向かいベッドへ寝かせた。
「制服で寝かせる訳にもいかないよな…」
独り言のように呟いてから、汐帆を部屋着に着替えさせた。
それにしても、汐帆に幼なじみがいたことは知らなかった。
少なからず、汐帆の育ってきた環境を理解しているのはあの2人だよな。
汐帆は何があったのか、どんな環境で育ってきたのかは言わないだろうけど、いつか話せるようになってほしい。
一緒に暮らし始めてからも、汐帆には時々これ以上踏み込ませないようにと壁を作ってしまう。
汐帆の過去は深くは分からないけど、この先もこうやって壁を作ってしまうのであれば汐帆に何があったのか、何が汐帆を今のようにさせているのかを知って一緒に乗り越えていかなければいけないと思う。
汐帆が前を向いて生きていけるようになるためにも。