孤独な心
守りたいもの
ーside 千紘ー
彼女が入院したくない理由。
医療費のことを気にしていた。
本来なら、そんなことを気にしなくてもいい年頃。
病気がなければきっともう少し心に余裕が持てていたのかもしれない。
彼女の緊急連絡先は誰もいなかった。
連絡の取れる相手がいない。
まだ高校1年生なんだよな…
言葉にはしていないけど、きっとこの子は…
たぶん…汐帆は親からの愛情をちゃんと受けてない。
これは俺の憶測にしか過ぎないけれど、今までの汐帆を見てきて思ったことだった。
だから人に甘えることを知らない。
頼り方、愛し方を知らない。
だからこそ、自分の感情をうまく外に出せないんだと思う。
頑なに心を閉ざし、周りの大人も信用していない。
だけど…
もう、限界であることは目に見えて分かる。
彼女自身の抱えているものが大きすぎて、その重荷に潰されそうになっていることも。
俺の言葉を聞いて、少しだけど彼女の気持ちが変化したような気がした。
スタート地点に立ったと思いたい。
きっと、やっと俺の言葉に耳を傾けてくれるようになったのかもしれない。
「汐帆。
汐帆が良ければでいい。
というより、これは完全に俺からのお願いなんだけど…」
「…何?」
汐帆は、身体を半分だけ起こし目を合わせた。
たったそれだけの事が、たまらなく嬉しい。
「退院してからは、俺と一緒に暮らそう。」
「え?」
「生活費のことも。治療費のことも。もう、何も気にしなくていい。
というか汐帆。汐帆は今、高校生であって本来ならやりたいこと思いっきり楽しんでいい時間なんだよ。
無理に、俺の事を信用しようとしなくてもいい。
ただ、俺は汐帆に傍にいてほしいんだ。
汐帆のこと、もっと知りたい。」
汐帆は、俺の言葉を真剣に受け止めてくれているようだった。
だけど…
そんな期待は覆された。
「…私は1人で生きていくって決めたの!
この先もずっと1人でいいの!
だから、これ以上私に関わろうとしないで!」
「…それ、本気で言ってるのか?」
「えっ?」
「だったらなんで、そんなに苦しそうな顔してるんだよ。」
「何…言って…」
「なんでそんなに泣きそうな顔してるんだよ。」
「意味わかんない。私がいつ…そんな顔をしたのよ!」
「悪いけど、そんな顔をされたら余計にほっとけない。そんな顔されてほっとけるなら最初からこんなに汐帆に歩み寄ったりしない。」
初めて見たあの日から。
本心とは思えない発言をする汐帆をこの手で守っていきたい。
その時に決意した覚悟は簡単に覆るほどそんな甘いものじゃない。
俺は、汐帆の身体を優しく抱き寄せていた。
「…もう…やめてよ!」
案の定、必死に抵抗するけどこれ以上抵抗できないように強く抱きしめていた。
「もう!やめて!何で出会ったばかりの私にそんなに構うのよ!
あなたはただの主治医であってそれ以上の関係なんて必要ないじゃない!
私の事どうしたいのよ!」
「好きだからに決まってるだろ。」
「え?」
「汐帆のことが好きだから…。ただ、傍にいてほしい。それだけだ。」
もう、色々考える必要はないと思った。
たとえ、出会ったばかりだろうが主治医と患者だろうが関係ない。
「何言ってるの!そんな言葉で私がコロッと騙されて着いていくとでも思ってるの?
そんな言葉、信じない。信じられるわけないじゃない!」
「でも俺は、今ここにいる汐帆が好きだよ。今は信じなくていい。ゆっくりでいいから、汐帆のペースでゆっくり歩み寄ってほしい。俺は、どんな時でも汐帆の傍から離れない。何があったとしても。
それに、何も怖がることなんてない。汐帆が思ってるより誰かを信じて深く関わることは、温かくて心地良いものなんだ。」
「え…?」
俺は、汐帆の体をそっと離し、汐帆の顎をすくい上げた。
「汐帆…
人は一人じゃ生きられない。人は自分が望まなくても何らかのかたちで触れ合って助け合ったりしてるもんなんだよ。
今まで汐帆がどんな生活して生きてきたかは俺は知らない。それは俺が考えてる以上に辛くて苦しくて孤独なものだったのかもしれない。
だけど、今こうして汐帆が居るのは何らかの形で誰かの支えがあったからで、気づかないうちに誰かとちゃんと関わって支え合ってきてるんだよ。
もし、お前が今まで自分一人で生きてきたって思ってるならそれは間違ってる。ただの被害妄想でしかない。」
「はっ?」
「自分一人が辛くて不幸だなんて思うな。
汐帆が知らないだけで世の中には辛い思いをしてる奴らなんてその辺にたくさんいるんだ。
それでもみんな必死で頑張って生きてる。みんな表には出さないだけで自分の中で必死で何かと戦ってるんだよ。」
彼女が入院したくない理由。
医療費のことを気にしていた。
本来なら、そんなことを気にしなくてもいい年頃。
病気がなければきっともう少し心に余裕が持てていたのかもしれない。
彼女の緊急連絡先は誰もいなかった。
連絡の取れる相手がいない。
まだ高校1年生なんだよな…
言葉にはしていないけど、きっとこの子は…
たぶん…汐帆は親からの愛情をちゃんと受けてない。
これは俺の憶測にしか過ぎないけれど、今までの汐帆を見てきて思ったことだった。
だから人に甘えることを知らない。
頼り方、愛し方を知らない。
だからこそ、自分の感情をうまく外に出せないんだと思う。
頑なに心を閉ざし、周りの大人も信用していない。
だけど…
もう、限界であることは目に見えて分かる。
彼女自身の抱えているものが大きすぎて、その重荷に潰されそうになっていることも。
俺の言葉を聞いて、少しだけど彼女の気持ちが変化したような気がした。
スタート地点に立ったと思いたい。
きっと、やっと俺の言葉に耳を傾けてくれるようになったのかもしれない。
「汐帆。
汐帆が良ければでいい。
というより、これは完全に俺からのお願いなんだけど…」
「…何?」
汐帆は、身体を半分だけ起こし目を合わせた。
たったそれだけの事が、たまらなく嬉しい。
「退院してからは、俺と一緒に暮らそう。」
「え?」
「生活費のことも。治療費のことも。もう、何も気にしなくていい。
というか汐帆。汐帆は今、高校生であって本来ならやりたいこと思いっきり楽しんでいい時間なんだよ。
無理に、俺の事を信用しようとしなくてもいい。
ただ、俺は汐帆に傍にいてほしいんだ。
汐帆のこと、もっと知りたい。」
汐帆は、俺の言葉を真剣に受け止めてくれているようだった。
だけど…
そんな期待は覆された。
「…私は1人で生きていくって決めたの!
この先もずっと1人でいいの!
だから、これ以上私に関わろうとしないで!」
「…それ、本気で言ってるのか?」
「えっ?」
「だったらなんで、そんなに苦しそうな顔してるんだよ。」
「何…言って…」
「なんでそんなに泣きそうな顔してるんだよ。」
「意味わかんない。私がいつ…そんな顔をしたのよ!」
「悪いけど、そんな顔をされたら余計にほっとけない。そんな顔されてほっとけるなら最初からこんなに汐帆に歩み寄ったりしない。」
初めて見たあの日から。
本心とは思えない発言をする汐帆をこの手で守っていきたい。
その時に決意した覚悟は簡単に覆るほどそんな甘いものじゃない。
俺は、汐帆の身体を優しく抱き寄せていた。
「…もう…やめてよ!」
案の定、必死に抵抗するけどこれ以上抵抗できないように強く抱きしめていた。
「もう!やめて!何で出会ったばかりの私にそんなに構うのよ!
あなたはただの主治医であってそれ以上の関係なんて必要ないじゃない!
私の事どうしたいのよ!」
「好きだからに決まってるだろ。」
「え?」
「汐帆のことが好きだから…。ただ、傍にいてほしい。それだけだ。」
もう、色々考える必要はないと思った。
たとえ、出会ったばかりだろうが主治医と患者だろうが関係ない。
「何言ってるの!そんな言葉で私がコロッと騙されて着いていくとでも思ってるの?
そんな言葉、信じない。信じられるわけないじゃない!」
「でも俺は、今ここにいる汐帆が好きだよ。今は信じなくていい。ゆっくりでいいから、汐帆のペースでゆっくり歩み寄ってほしい。俺は、どんな時でも汐帆の傍から離れない。何があったとしても。
それに、何も怖がることなんてない。汐帆が思ってるより誰かを信じて深く関わることは、温かくて心地良いものなんだ。」
「え…?」
俺は、汐帆の体をそっと離し、汐帆の顎をすくい上げた。
「汐帆…
人は一人じゃ生きられない。人は自分が望まなくても何らかのかたちで触れ合って助け合ったりしてるもんなんだよ。
今まで汐帆がどんな生活して生きてきたかは俺は知らない。それは俺が考えてる以上に辛くて苦しくて孤独なものだったのかもしれない。
だけど、今こうして汐帆が居るのは何らかの形で誰かの支えがあったからで、気づかないうちに誰かとちゃんと関わって支え合ってきてるんだよ。
もし、お前が今まで自分一人で生きてきたって思ってるならそれは間違ってる。ただの被害妄想でしかない。」
「はっ?」
「自分一人が辛くて不幸だなんて思うな。
汐帆が知らないだけで世の中には辛い思いをしてる奴らなんてその辺にたくさんいるんだ。
それでもみんな必死で頑張って生きてる。みんな表には出さないだけで自分の中で必死で何かと戦ってるんだよ。」