〜ずっと好きだよ~俺と彼女の溺愛生活
徹治
俺には、好きな女がいる――――――


兄貴(徹治(てつじ))の彼女・千香子さんだ。

大学に入学して、俺は千香子さんに出逢った。


一目惚れだった。

二つ年上の千香子さん。

大学では、とても人気だった。

明るくて、優しくて、小柄で童顔故に容姿が可愛い。
真面目で、素直な人。

ダチも多くて、いつも男女問わず囲まれていた。


正直、兄貴からすぐにでも奪えると思っていた。

容姿には自信があったし、モテてたし、大学に入学してからも女達に何度も告白だってされた。

確かに中・高生の時は、不良連中とつるんでて悪いこともしてたし、あんま家にも帰らなかったし、警察の世話にもなってた。
後先考えずにタトゥー入れたし、女にも汚くてよく泣かしてた。

でも高校卒業と同時に、奴等とはきっぱり縁を切った。

ちゃんと真っ当に生きて、千香子さんに好きになってもらおうって。


でも…千香子さんの視線は、いつだって兄貴に向いていた―――――――



でも“ある出来事が”俺と千香子さんの関係を大きく変えた。

 

俺が大学二年になってすぐの頃。

「虎徹、話がある」

両親に呼ばれ、兄貴の口から出た言葉。
あまりにも衝撃的で、言葉をなくした。



「俺、さ。
あと、三ヶ月だってさ……」

「は?
何が?」

「命」

「………」

「………」

「………は?」

「ここんとこ、やたら身体がダルくて。
病院行ったら、癌なんだって―――――――
――――――――――――――」

淡々と、兄貴が話している。

親父はただ…険しい顔してるし、お袋はずっと泣いていた。

俺は……すぐに、千香子さんのことが頭に浮かんだ。

「千香子さんは!?」

「あ、あぁ…
明日、話そうと思う」


千香子さん、大丈夫かな?

兄貴が死ぬことは、もちろん悲しい。
でも俺は正直、千香子さんのことばかり考えていた。



そして………その次の日から、千香子さんに笑顔がなくなった。

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