〜ずっと好きだよ~俺と彼女の溺愛生活
『「キス…したい…」』

青代とクリタ。
淡い片思いをしている、二人。

それぞれの場所で、同じ想いに支配されていた。



『―――――ん?アオテツくんなんか言いました?』

『え?いえ!』

『そう?
あ、もうすぐそこだから、アオテツくんここでいいですよ?
送ってくれてありがとうございました!
また、職場で!』

小さく手を振り、マンションに駆けて行こうとする千香子の手を掴む青代。

『え?アオテツくん?』

『あ…
えーと…ちゃんと、ギリギリまで送りますよ?』

そしてそのまま手を握り、手を引いた。

『え……アオテツくん、手…離し――――――』

『一つ聞いてもいいですか?』
手を引き、前を向いたまま千香子の言葉に被せるように声を張り上げた。

『え?』

『俺がもし…モリチカさんが好きって言ったら……どうします?』

『………』
その言葉を聞いて、千香子がピタリと立ち止まった。

『……っと…!?』 
ツン止まり、振り返った青代。

『ごめんなさい』
千香子はただ一言、そう言った。

『…………ですよね〜(笑)
あ!もしも、もしもの話ですからね?(笑)
気にしないでくださいね!』
ケラケラと笑いながら言う。

『………』

『………モリチカさん?』

『手、離してもらっていいですか?』

千香子は、冷静に淡々とした雰囲気で真っ直ぐ青代を見上げ言った。

『あ、は、はい…!』

『送ってくれてありがとうございました!
本当に、ここでいいですから!』

『いや、だから―――――』

『私は!
虎徹くんとの未来しか見てません。
考えたくないけど……
虎徹くんを万が一失ったら……その時は、一人で生きていく。
そう、決めてるんです』

迷いのない、真っ直ぐとした言葉と声。

『…………モリチカさん…』

『じゃあ、また職場で!』

千香子は小さく手を振り、今度こそ駆けていった。


『………』

その後ろ姿を見ながら、青代は胸元をギュッと握りしめていた。

『…………フフ…
結構…堪えるな…これ……(笑)』

切なく笑って、ゆっくり踵を返し歩き出した。

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