〜ずっと好きだよ~俺と彼女の溺愛生活
季節は冬になり、すっかり寒くなってきたある日。
今年も感染症が流行っていた。


ゲホッ…ゴホッ…と寝室に、千香子の咳が響いている。

「千香子さん、熱は?
見せて?」

虎徹に体温計を渡す。

「38,8…
千香子さん、病院行こ?
タクシー連絡するね」

「あ…」

「ん?」

「自分で行くから、虎徹くんは仕事行って?」

「………」

「虎徹くん?」

「千香子さん、一人にしたら歩いて行くだろ?病院」

「え?」

「千香子さんが考えることくらい、すぐわかる」

「………」
図星をつかれる、千香子。

「タクシー代、もったいないとか言ってさ」

「うぅ…」

「俺のためなら惜しみなく金使うのに、自分のためにはほんと使わないよな」

「………」

「とにかく!
タクシー呼ぶから。
着替え……は、いいか!
上にコート羽織れば。
ちょっと待ってて」

一度寝室を出ていく虎徹。
すぐに、通話をしながら戻ってきた。

「―――――はい、はい!
じゃあ、すぐ出ます!」
通話を切った虎徹が「千香子さん、近くにいるからすぐ着くって」と言って、千香子をゆっくり起こした。

コートとマスク、靴下を千香子に着せる。
そして自分もマスクをして、千香子を支え立たせた。

「歩ける?
きついなら、抱っこするよ?」
「大丈夫。
あ、でも財布とスマホ、持ってかなきゃ…」

「は?いらないだろ?
診察券と保険証は引き出しから取ったし、金は俺が持ってるし、スマホも必要ない」

そして支えられながら、マンションを出る。
タクシーが待っていて、乗り込んだ。

「千香子さん、俺に身体預けてていいからね」
「ん…ありがと…」
虎徹に身体を預け、目を瞑った。

病院についてからも、献身的に千香子に寄り添う虎徹。

「森浦さん、診察室へどうぞ」

「あ、千香子さん呼ばれたよ。
一人で行ける?」

「ん…大丈夫…」
虎徹に身体を預けていた千香子が、ゆっくり立ち上がる。

少しふらつきながら、診察室に向かった。
その後ろ姿を心配そうに見つめる、虎徹。

千香子が戻ってくるまで、ジッと診察室のドアを見つめていた。

しばらくして、千香子がドアから出てくる。
直ぐ様迎えに行く。

「千香子さん!
どうだった?」
 
「たぶん、インフルエンザだろうって。
今、検査待ち。
結果が出るまで、待合室で待っててって」

千香子を支え椅子に座り、寄り掛かる千香子の背中をゆっくり撫でる。

陽性の結果が出て、会計を済ませて病院を出た。
< 123 / 139 >

この作品をシェア

pagetop