〜ずっと好きだよ~俺と彼女の溺愛生活
「―――――待って!!虎徹くん、待ってよ!!」

ホテルを出て、早足でスタスタ歩く虎徹を必死に追いかける千香子。

何度も呼びかける。

「………」

「虎徹くん!!」

「………」

「お願い!!」

「………」

「待って!!」

「………」

「お願い!!虎徹くん!待って!!」

ピタッと、立ち止まる虎徹。
千香子は虎徹の前に回り、息を切らし見上げた。

「千香子さん」

「はぁはぁ…ん?」

「“本当は”俺のこと、どう思ってんの?」

「“本当は”って?
好きだよ!
大好き!!」

「……………嘘…」

「え……どうして、そんなこと言うの?」

「俺は“兄貴の代わり”なんだろ?」

「は?」

「千香子さんは、俺があの時何があっても離れなかったから傍にいてくれてんだろ?」

「何…言って、る…の?」

「あの時……周りの奴等が離れてった時、俺が傍にいたから俺と付き合ってくれたんだろ?」

「そんなわけない!!」

「誰でも良かった?都合が良かった?
俺だけだもんな。
あの時、離れなかったの」

「………酷い…!!
どうして!そんなこと言うの!?」

「だったら!!
言えよ!!
なんで、プロポーズ受け入れてくんないの!!?」

「それは……」

「…………ほら、言えねぇじゃんか!!
酷いのは、どっちだよ!!」

「虎徹くん……」

「俺がどんな気持ちで、ずっと千香子さんを想ってきたと思ってんの!?
どんな気持ちで、二年間を過ごしてきたと思ってんだよ!!?
千香子さんに苦しい思い、悲しい思いもさせないようにって、投資で金を貯めて、千香子さん中心に暮らすための仕事を考えて就職して、千香子さんのことばっか考えてきたんだ……!」

「………」

「こんなことなら、千香子さんを出逢いたくなかった……」

「え……」

「なんで、俺の前に現れたんだよ!!」

「虎徹くん…」

「返せよ!!
俺の心、返せ!!」


虎徹は、もう……止まらなくなっていた。

苦しくて、悲しくて、痛くて……


「もう……顔も見たくない……!!」


「――――――!!!!?」


虎徹は、思ってもいない言葉が口から出ていた。

千香子の目が大きく見開かれた。
あっという間に涙が溜まり、溢れだした。


「うん…ごめん…なさ……」


千香子がポツリと呟くように言って、ゆっくり後ずさる。


すると……

千香子の背後から、バイクが走ってきた。


「え……千香子さ……!!!?」

クラクションが鳴っている。

しかし千香子の耳には、その大きな音は入っていなかった。


「千香子さん!!!危な――――――」

虎徹が、駆け出す。

「え………」

そこで漸く千香子は、背後にバイクが迫っていることを知る。


ギュッと…目を強く瞑った。
ドン……と突き飛ばされる。


キキーーーーーーッ!!!!


気がつくと、血だらけの“虎徹が”横たわっていた。
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