〜ずっと好きだよ~俺と彼女の溺愛生活
「バンド、外していい?」

「え……」

「見せて?
リスカの傷」
そう言って、優しくリストバンドを外した。

「………」
千香子は、ギュッと目を強く瞑った。

「………やっぱり…」

「………」

「何回?」

「………え…」

「何回、切った?
俺と離れてた二年で、何回切ったの?」

「………一回…」

「一回?
ほんとに?
それにしては、傷痕深いよ?」

頷く、千香子。
「ただ、思ったより深く切ったの」

「そ…っか…
なんで?
何か、不安なことあったの?
……………まぁ…なんとなく、わかるけど」

「え……」

「イジメ」

「え…!!?」

「はぁ…やっぱりな。
職場でイジメられたんだろ?
この十日間の千香子さん見てたらわかる。
千香子さん、ここ触るの癖になってるし。
さっきも“イジメられたら…”なんて言ってただろ?」

「…………ごめんなさい。
約束したのに…
“強くなる”って」

「ほんとに、反省してる?」

虎徹の穏やかで、優しい声色。
千香子は目を潤ませ、何度も頷いた。

「もう…ダメだよ?」

「うん」

「何かあったら、俺を呼んで。
“そのために”俺はあの会社に就職したんだから!」

「え…?」

「通勤時間も、出勤数も自由。
ノルマは厳しいけど、マイペースに仕事出来る。
だから仕事中に千香子さんに呼ばれたら、飛んでいける……!」

「そのために……?」
(嘘……私の…た、め……?)

大きく頷く、虎徹。
千香子は、堪えきれず涙が溢れていた。

千香子の目元を優しくなぞり、涙を拭ってくれる虎徹。

「ありがとう……!」

虎徹が微笑み、頷く。

「虎徹くん」

「ん?」

「私は、虎徹くんに何が出来るかな?」 

「え?」

「虎徹くんが、そこまで考えてくれたなんて知らなかった。
私、虎徹くんに甘えてばかりだもん。
何、すればいい?
何でもするから!」

「だったら……」

「うん」

「もう二度と、自分を傷つけないで?」

「うん」

「傍にいて?」

「うん」

「俺を頼って?」

「うん」

「もっと、俺に甘えて?」

「うん。
…………え?それだけ?
もっと、何かない?」

「俺は、千香子さんの一番になりたい」

「虎徹くん…」

「嬉しい時、悲しい時……一番に頼りにされたい。
千香子さんのことを、千香子さんよりも知ってたい」

千香子の頬を包み込み、言い聞かせるように言った。
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