〜ずっと好きだよ~俺と彼女の溺愛生活
三ヶ月と言っていたが、兄貴はそれから二ヶ月もせずに亡くなった。

本当に、あっという間だった。

葬式には、千香子さんも来てくれた。

千香子さんは涙一つ流さずに、ただ…兄貴を見送っていた。

親父とお袋は「強い人ね」と話していたが、俺には全くそんな風に見えない。

今にも消えそうで、脆くて、弱々しく見えた。



そんな思いが的中したのは、兄貴の葬式が終わった次の日。

俺は心配で、千香子さんの住むアパートに向かった。

チャイムを何度も鳴らすが、一向に出てくれない。

「千香子さん!千香子さん!!」

嫌な予感がする。

俺は大家に事情を説明して、鍵を開けてもらった。


「千香子さん!いる!?
―――――――――
―――――――!!!!千香子さん!!?」

千香子さんは手首を切って、自殺未遂を犯していた。


「――――私も、徹治くんのとこに逝こうとしたの。
でも結局怖気づいて、中途半端に切っただけ……」

そう言って、弱々しく笑っていた。

でも………

これっきりのことでは終わらなかった。


それからも何度も千香子さんは、兄貴を追って死のうとした。

だけど結局最後は怖気づいて、未遂で終わる。

人騒がせな千香子さん。

段々…千香子さんの周りから、ダチがいなくなっていく。


「………ねぇ、虎徹くん」
そして今日も千香子さんは未遂を犯し、病院にいる。

「ん?」
俺は千香子さんの背中をゆっくりさすりながら、話を聞いてた。

「どうして?」

「何?」

「どうして、虎徹くんは傍にいてくれるの?」

「好きだから」

「え?」 

「俺ずっと、初めて会った時から、千香子さんのこと好きなんだ!
だから、立ち直ってほしい!
で!俺のことを、ちゃんと見てほしい!」

「虎徹くん…」

「兄貴が好きだった、明るくて、優しくて、可愛い千香子さんに戻ってよ!
今の千香子さん、カッコわりぃよ!
こんな千香子さん見たら、兄貴悲しむよ?」 

俺は、切なくて苦しくなっていた。
目の前の千香子さんは、ボロボロで消えそうで……
どうすれば、昔の千香子さんに戻るんだよ!!

「あ……そ…だよね…」

「うん。
兄貴は、生きたくても生きれなかった。
でも千香子さんは、その分生きられるだろ?
“生きることを、諦めるなよ!!”」

千香子さんに、どうにか立ち直ってほしい。
そんな思いで、言葉をぶつけた。

「――――――!!!!?」

「兄貴の分まで、生きてよ!!
で!俺が!兄貴の分まで、千香子さんを幸せにしたい!!」


俺の言葉に諭されたように、千香子さんは大きく頷いて、久しぶりに笑ったのだ。
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