〜ずっと好きだよ~俺と彼女の溺愛生活
瞳が切なく揺れ、小さく震えだした。

「え……千香ちゃん!?」

「千香子さん!
大丈夫だよ、大丈夫…大丈夫…」
虎徹が背中をさする。

「徹治く…は、二年前に…亡くなっ…た…の……」

「え……なん…で…
なんで!!?」

「癌です。
リンパだったし、若かったからあっという間に癌が全身に……
告知受けて、本当にあっという間でした……」

信じられないという風の糸岩に、虎徹が答えた。

「そ…っか……
ごめん、俺…高校卒業してすぐこっちに来たから、全然知らなくて……」

「私ね…徹治くんが亡くなって、何度も自殺未遂犯したの……」
そう言って、リストバンドを取った。

リストカットの痕を、糸岩に見せる。

「え……千香、ちゃ…これ……」 

「ごめんね、こんなの見せて…
でも、私……」

それを見て、糸岩は切なく瞳を揺らし優しく千香子の左手を取った。
そして、傷痕をさすった。

「そ…っか……
千香ちゃん…辛かったよな……」

「虎徹くんが、こんな私をずっと支えてくれたの」

「そうか…それで、二人は今……」

「うん…!
今、一番大切な人!!」

「フッ…そっか!
まぁ、ある意味徹治も喜んでるかもな!」

千香子が微笑むと、糸岩も優しく微笑んだ。
すると、糸岩の手を掴んだ虎徹。

「糸岩さん、もう良くないですか?
千香子さんの手、触るの」
不機嫌になり、千香子をグッと自分の方に引き寄せた。

「あ、あぁ(笑)
フッ……何?ヤキモチ妬いてんの?(笑)」
そう言って、離した。

「うるさいです。
千香子さん、俺達行かないと…」

離れたくない。
そう思いながらも、心の中で気合いを入れ直す。

「あ、そうだよね!
ごめんね、長く引き止めちゃった!」

「ううん、大丈夫!
…………じゃあ…ね」

「うん!仕事、頑張ってね!」
小さく手を振り、千香子が去っていった。


そして糸岩に向き直った。
「千香子さんは“俺の”女なんで!
勝手に触らないでください」

「フッ…わかってるって!
つか、ほんと兄弟だなぁー
徹治も、よく同じようなことを俺達に言ってきてた(笑)
千香ちゃん、モテてたから!
でも千香ちゃんは、徹治“しか”見てなかった。
今もきっと…原藤くん“しか”見てない。
それに!
俺のタイプは、もっとツンとした女だから!
千香ちゃんのことは、可愛い妹みたいな感覚なんだ!」

見据えてくる糸岩に、虎徹も安心したように頷いたのだった。
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