〜ずっと好きだよ~俺と彼女の溺愛生活
そして………駅に着き、降りた二人。
虎徹の実家に向かう。


「―――――千香子ちゃん!
久しぶりね!」

「あ、おばさん!
ご無沙汰してます!
ご挨拶もせずに、街を出てすみません!」

「ううん、辛いわよね?この街は…
でも、良かった!
元気そうで!」 

「はい!
虎徹くんのおかげです!」
虎徹の母親が出迎えてくれ、丁寧に挨拶をした。
リビングには、父親もいて「元気そうで良かった!」と喜んでくれた。

仏壇に行き、徹治に手を合わせた虎徹と千香子。
その後、リビングに戻る。


「虎徹、千香子ちゃん。
今日は、二人に受け取ってほしい物があるんだ……!」

父親が、虎徹と千香子を見据え言った。
母親が小さな箱と、手紙をテーブルに置く。

「これは、徹治からだ」

「「え……」」

「癌の告知を受けた時に、徹治が私達に渡してきたの」
「“俺が死んだら、千香子に渡してほしい”ってな」

「そうですか…」

「でも千香子ちゃん、ボロボロだったでしょ?
手紙の内容はわからないけど、もしそれで更にボロボロにさせたら…って考えて、時期を見て渡すことにしたの」

「そうだったんだんですね。
お手紙、読んでいいですか?」

「あぁ」
「どうぞ?」

隣で虎徹もゆっくり頷く。

千香子は少し震える手で手紙を掴み、丁寧に封を開けた。


久しぶりに見る、徹治の字。
少しクセのある字を見るだけで、目が潤んだ。

【千香子へ
ごめんな。
ずっと、傍にいてあげられなくて。
さっき、千香子にガンのことを伝えてきたんだが、正直びっくりした。
涙も、声を荒らげることも、もしかしたら感情もないんじゃねぇかってくらいに淡々としてたから。
でも千香子のことだから、今はボロボロ泣いてんだろうな。
俺的には、泣き叫んですがりつかれる想定だったんだがなぁー
あの時、千香子はどんなことを考えてた?
どんな思いで、俺の話を聞いてた?
千香子。
俺、こえーよ。
死ぬことは全く怖くないのに、千香子に会えなくなることが怖い。
千香子ともっと、色んな所に行きたかった。
千香子ともっと、色んな話をしたかった。
千香子に触れて、キスをして、抱いて、ずっと千香子の傍にいたかった。
でも、無理だもんな。
だから、せめてお願いがある。
親父に渡した、箱の中の指輪をつけてて欲しい。
本当は左手の薬指がいいが、さすがにワガママだからな。
どんな形でもいいから、身につけててほしい。
原藤 徹治って存在を、千香子の傍にいさせてほしい。

どうか……俺を忘れないで。

あと、もう一つ。
虎徹のことを頼む。

徹治】
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