〜ずっと好きだよ~俺と彼女の溺愛生活
手紙に、千香子の涙がポタポタと落ちる。
千香子は手紙を、ギュッと握りしめた。

虎徹が、千香子の背中をゆっくりさする。

テーブルの上の小さな箱に手を伸ばした、千香子。
開けると、ペアの指輪が入っていた。

“虎徹を頼む”

千香子は片方を自身の左手の薬指につけ、もう一つを虎徹の手の平に置いた。

「これ、つけてあげて?」

「え……
でもこれ…たぶん、兄貴の……」

千香子はゆっくり首を横に振り、手紙を虎徹に渡した。
「読んで?」

受け取り、虎徹も読んだ。

「………………」
読み終わった虎徹が、その指輪を左手の薬指につけた。

「フッ…兄貴って、指太いんだな(笑)」
一回り大きい指輪に、虎徹が笑う。

「サイズ、変えに行こうね……!」
「あぁ!」

千香子が虎徹の左手に、自身の左手を重ねた。

そして虎徹の両親、徹治に挨拶をして実家を出た。
 


「――――――でも、いいの?」
「ん?」

「これ、兄貴と千香子さんのその……」
左手の指輪を見て言う、虎徹。

「手紙に書いてたでしょ?
“虎徹を頼む”って!
徹治くん、言ってたの。
“虎徹、千香子に惚れてる。
虎徹になら、渡してもいいかな〜”って。
冗談って言ってたけど、どこかで本気だったのかもって」

「そっか」

「だからね。
“ある意味”これは、私と虎徹くんへの徹治くんからの贈り物なんじゃないかな?
かなり、都合いい解釈だけど…(笑)」

「フッ…確かに(笑)
でも、兄貴の分まで千香子さんを幸せにするって、益々気合いが入る!」

「フフ…そうだね!
私も虎徹くんを、幸せにしたい!」

「俺は、千香子さんが傍にいて、好きでいてくれたらそれで幸せ!」

「うん!
好き!傍にいたい!」

見上げ微笑むと、虎徹も「俺も!大好き!傍にいる!」と笑った。


そして旅館に着き、荷物だけ置いて外に出た二人。

指を絡めて手を繋ぎ、ゆっくり歩く。

「暑いけど、風が気持ちいいね!」
「うん、この辺海が近いからな!
行ってみる?」

「え?
……………えーと…ち、違う所がいいな…」
歯切れの悪い、千香子。

「………そう?」

「ごめんね」

「………」

「………」

その後二人は、ランチに近くのレストランに向かった。
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