〜ずっと好きだよ~俺と彼女の溺愛生活
「―――――じゃあ、千香子さん。
俺、出たらそこの喫煙所にいるから!」

大浴場の前。
別々に風呂に向かう前に話している、二人。

「なるべく急ぐね!」

「いいって!
せっかくだし、ゆっくり入ろ?
俺も、ゆっくり入るから!
つか。俺的には、タトゥー入れてんのに温泉入れるってことが奇跡みたいなもんだし(笑)」

「あ…確かに…(笑)」

「この旅館だけだもん、そんなぶっ飛んだ旅館(笑)」

「フフ…だね(笑)」

「だからさ。
俺も、ここぞとばかりに満喫するから!」

「うん…わかった!
じゃあ、後でね!」

女湯に千香子が入ったのを確認して、虎徹も男湯に入った。

タトゥー・刺青OKの旅館なだけあって、ほぼそんな人達でいっぱいな男湯。

「………」
(なんか、異様な空間だよなぁー(笑))
虎徹は苦笑いをして、温泉に浸かった。



(へぇー、女性でも結構いるだなぁー、タトゥー入れてる人)
一方の千香子も、女性達を見てそんなことを考えていた。

「私も、入れる?(笑)」
ポツリと呟き、クスッと笑った。

入れるとしたら、何が良いかな〜なんて考えながら、露天風呂を満喫している千香子。

ボーッと考え込んでしまい、いつの間にかのぼせていた。

「あー、ヤバ…
つい、考え込んでしまった…(笑)」

脱衣所で、バスタオルだけ身体に巻き椅子に腰掛けた。
ちょうど、扇風機が設置されていて涼しい風が流れてきた。

しばらく、身体を冷やす。

不意に、左手の薬指が目に入る。

“俺を忘れないで”

「忘れられないよ……」

きっと…ずっと………

左手首のカットバン(大判のカットバンで隠している)をさすった。


『―――――千香子。俺…死ぬんだって』

徹治のあの日の言葉が、耳に響いてきた。


「あー!ダメダメ!」
頭を横に振り、払拭する。

身体も冷えてきたので、着替えるためロッカーに向かった。

女性脱衣場の洗面台が満員で、千香子は部屋で頭を乾かそうと思い髪の毛を拭きながら女湯を出た。

露天風呂の横にある扉から出ると、外に喫煙所があり、そこに虎徹がいた。

いかにもそっち系?の恐ろしい人達に紛れるようにいる、虎徹。

「………」
(こ、怖くないのかな……?
てゆーか……)

「か、カッコいい……//////」

千香子が選んだ、虎の柄の浴衣。
それをカッコ良く着こなしている、虎徹。

その姿に、見惚れていた。
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