〜ずっと好きだよ~俺と彼女の溺愛生活
「―――――千香子さーん!ただいま〜」

その足で虎徹が自宅マンションに帰ると、千香子はモンブランを頬張っていた。

「え!!?
虎徹くん!!?」
びっくりして、目を見開いている。

「それ、俺のは〜?」

「あ…えーと……
まだ虎徹くんまだ帰ってこないと思ってて…その…」

「えー、酷くない?(笑)」

「ご、ごめんね!
残り、食べる?」

「うん!
――――――あーん!」
隣に座った虎徹が、口を開けて待つ。

ふわっと虎徹を纏う香りが、千香子に漂う。
「………」
でも千香子は、固まったように動かない。

「ん!千香子さん!食べさせてよ!」

「あ…う、うん。
あーん…」

「あーん!ん!旨いっ!
これ、○○のモンブランだろ?
やっぱ旨いな!」

「うん。
あと一個しか残ってなくて…
そうじゃなかったら、二つ買って帰って、虎徹くんが帰るの待つつもりだったんだけど……」

「そっか!」と言って「もう一口!」と口を開けて待つ、虎徹。

千香子は頷き、モンブランを口に持っていきながら、頭の中では全く別のことを考えていた。


(また、この香水の香り……
誰なんだろ?
ここんとこ、毎回なのよね……)

虎徹から香る、女性物の香水の香り。

だいたい虎徹は、仕事から帰ると虎徹の吸っている煙草の臭いをさせて帰ってくる。
仕事終わりに必ず煙草を吸って帰るからだ。

しかしここ最近は、毎回虎徹から微かに同じ女性物の香水の香りが香ってくるのだ。

会社に、女性社員がいることはわかっているし、普通に接していても香りが移ることだってあるのはわかる。

しかしここ最近から突然香ってくるようになったので、千香子は色々嫌なことばかり考えていた。


「ん、ご馳走様!
あ、俺。手洗ってねぇし、うがいもしてねぇ(笑)
ついでに着替えてくるね〜」
そう言って、リビングを出ていった虎徹。 

それを見送り、千香子は無意識に左手首を触り始めていた。

「………」

まさか、浮気?

「いやいや…虎徹くんに限ってそんな……」
ぶるぶる頭を横に振る。

しかし身体が震えてくる。

もし、虎徹くんに捨てられたら………


「…………千香子、さん?」
後ろから虎徹の声がする。

ビクッと震える。

平常心…平常心……
千香子は、自分に言い聞かせゆっくり振り向いた。
< 61 / 139 >

この作品をシェア

pagetop