〜ずっと好きだよ~俺と彼女の溺愛生活
虎徹はその一連の流れを見ながら、千香子に見惚れていた。

家の中と同じように、パタパタと動き回っている千香子。
陳列された服などを綺麗に整理したり、笑顔で接客したり。

片時も、目を離せない。

そして…………
ナリカワの“モリチカちゃんは、彼氏くんのこと話す時ノロケてくる”と言う言葉や、天胡の“虎徹くんは、素直で素敵なの”と言う言葉。

まさか、そんなふうに思ってくれていたなんて夢にも思っていなかったからだ。


「―――――じゃあ、よろしくお願いします!」
糸岩が頭を下げ、話し合いが終わる。

「虎徹、出るぞ?」

「………」

「原藤くん?」

千香子に見惚れている虎徹を見て、糸岩がため息をつく。
「はぁ…
…………虎徹!!」

「……っんぁ?」

「帰るぞ!
お前、まだ仕事溜まってるだろ!?
このままじゃ…ノルマ達成出来ねぇよ?」

「あ…うん。
千香子さんに一言挨拶してから出る」

「はいはい…(笑)」
「フフ…じゃあ、俺達は先に会社に帰ってるから」
呆れたように笑う糸岩と行橋に後ろ手で振り、千香子の元に向かった。


「―――――千香子さん!」
近づいて千香子の手を握り、指を絡めた。
千香子も微笑み、虎徹を見上げる。
「虎徹くん!」

「会社に戻るね」
「あ…うん」

「俺今日は少し残業するから、少し遅くなる。ごめんね…」
「うん…わかった」

寂しそうに瞳を揺らす千香子。
虎徹も切なくなりながらも、どこか嬉しい。

“それ程までに、俺を想ってくれてる”と思えるから。

「飯、先に食ってていいから。
あ、でも!
出来れば…起きて待っててほしい。
千香子さんとギューとチューしたいから」

「うん、待ってるよ!
大丈夫。
起きて待ってるから、仕事頑張って!」

千香子に“頑張れ”と言われると、不思議と力が湧く。
虎徹は微笑み、名残惜しく手を振りショップを出た。


ドン…………!!!

ショップを出る寸前。
男性の来店客と軽くぶつかる、虎徹。

「「あ…すんません」」

互いに、顔を見ることなく謝罪する。


しかし……

「………」

虎徹はなんとなく、振り返った。
どこかで、会ったことがある気がしたからだ。


そして、その男性も……

「………」
(もしかして………)

去っていく虎徹を見ていた。
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