あなたに愛されたい…青い空から舞う桜…
早くバスルームから出なきゃ!

髪は濡れたままだけど部屋で乾かせばいい、いつ病院から連絡が来るかわからないから、早く考ちゃんに疲れた体をお風呂でゆっくりしてほしい。

リビングから考ちゃんの声が聞こえてきた。

考ちゃんの背中に「考ちゃん…」と

私の声が届いてない。

「……待ってくれ……婚姻届は……まだ出してない……」

婚姻届…まだ…

誰との会話なの?

一瞬体がクラリとして支えることが出来ず、大きな音を立て転んだ。

「桜!どうした!おい大丈夫かぁ!」

考ちゃんは音にビックリして私の所に来てくれた。

「ごめんー、なんかちょっとのぼせたかなぁ〜」なんて私はさっきのことがなかったように乾いた笑いをした。

「髪が濡れたままじゃないか、ほら乾かして」

私を抱き上げドライヤーを渡してくる。


「自分の部屋でやるから大丈夫!、それより考ちゃんお風呂どうぞ」

ほら早く、早く、と無理に考ちゃんに勧め、私はお休み〜と部屋に急いで入った。

ドアを閉め足からズルっと崩れ落ちていく、さっきの会話が夢ならいいのに。

朝日がカーテンの隙間から漏れてくる、髪乾かすの忘れた。

私、寝た?分からない。一晩中ドアの前に座っていたんだ。

ゆっくりと立ち上がり、着替えをし適当に髪をまとめる。鏡は見たくない、何となく想像出来るから、音を立てないように部屋から出る。

考ちゃんは寝てるよね。私は今日が休みで良かった。

そして私は玄関を出た。

リビングに「友達と日帰り温泉へ行って来ます」

そんな嘘のメモをおいて。





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