【短編】ねぇ…キスして?
いつの間にか泣きながら眠ってしまった。
部屋中に響く着信音で目が覚める。
―――この音。
『はい』
《もしもし、真音?》
機械から聞こえるその声に
涙が溢れそうになる。
『……慧』
《遅くにごめんな?
今、近くなんだけど出て来れるか?》
時計を見ると時間はもう23時半だった。
『……うん』
《じゃあ、角のコンビニで待ってる》
電話を切った後
急いで用意をして
家族に気づかれないように家を出た。
ドキドキする。
本命さんと会って来た後なのかな?
終わりにしようって言われるのかな?
さっき決心したのに……。
モヤモヤしながら向かうコンビニ。
駐車場で車にもたれながら
右手で煙草を吸い
左手で携帯を耳にあてる慧が見えた。
モヤモヤしてたのに
姿を見つけた瞬間
心の霧が晴れる。
自然と駆け足になる。
こんなに胸を締め付けられる。
「わかってるって。
今日の埋め合わせはちゃんとするから。」
「そんなんじゃねぇよ。
イヴに悪かったと思ってるって…。」
聞こえてくる慧の声に
駆け足になっていた足は
ゆっくりに変わった。
きっと女の人だ…。
―――やっぱりダメだね…。