【短編】ねぇ…キスして?
「抱きしめてても

真音を感じても

心が俺にないのわかってた。



でも…俺は

一度もセフレだなんて思った事なかった。



でも、真音の心がないのがわかってたから

何か…キスだけは出来なかった。



キスしてしまうと

離せなくなりそうで…独占してしまいそうで

俺、本当は重い男だからさ…」



無理に作る笑顔を向ける慧に


沢山伝えたい言葉があるのに


涙が溢れ出て…言葉にならない。




「ずっと真音が好きだった。


本当は今も手離したくないけど

俺の方こそありがとうな…。」




慧の温もりが離れていこうとした瞬間

慧の背中に手を回した。



慧の胸に頬を寄せた。



一瞬、ビクついた慧。



「……真音

期待させるような事すんな。」




『慧…慧…』



慧がそっと頭を撫でてくれる。



「何もしてやれなくてごめんな。

幸せになれよな」



『…慧が…幸せにしてくれないの?』



慧の胸から少しだけ顔を上げ

見上げた先には困惑を浮かべた慧。



「―――……はっ?」


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