【短編】ねぇ…キスして?
別に可愛くないとかじゃないと思うんだ。
何度か告られたり
付き合った事もある。
だけど
こんなにもどかしくて
苦しい恋は初めてで
気持ち1つ口にする事が出来ない。
不安だらけ。
自信なんて微塵もない。
携帯が震え始め
画面を開く。
≪仕事が早く終わりそう
いつもの場所で会える? 慧≫
たったそれだけのメールに
顔が綻ぶのがわかる。
「あぁ、慧さんだ~?」
呆れた笑いを向けてくる詩歌に
綻んだままの顔で頷いた。
「ちぇっ
何だよ」
不貞腐れる恩田はもちろんスルー。
『待ち合わせ時間まで
どこで時間潰そうかなぁ』
一度帰って、着替えして来てもいいけど
今日はそんな時間がない。
本当は制服で会いたくない。
だって…
子供だって思い知らされるから――。
スーツが似合う大人の慧に
不釣合いだって…
感じずにはいられない。