アヤメさんと僕
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優れた技術をもっていなくても、いわゆる「いい人」でなくても、誰かの役に立つことはできる。
偶然出会えた人と、誠実に正面から向き合うなら、互いにいい影響を与え合えるのだ。
彼女との出会いはそう教えてくれた。

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あれから10余年。僕は人より少し早く美容室オーナーとなった。
アヤメさんにしごかれた成果かも知れない。

朝、店を開けるたび、あの朝やってきたアヤメさんを思い出す。
しっかりと思い出して、「心づくしのおもてなしが使命」と自分に言い聞かせる。

さあ、今日も、ここで誰かに意味のある物語が始まることを願って、精一杯お客様に寄り添おう。


End

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